服部新聞 平成29年6月5日 133号

木曽出張・アメリカ広葉樹原木製材完了・業界新聞に取り上げて頂きました

木曽出張

先月に引き続き木曽谷に木曽ヒノキの製材品の買い付けに出かけてきました。出品されているヒノキ材は先月と比べると見る影もないほど少なく端境期であることを自分の眼で確認しました。
広葉樹は主に冬場に生産するのは夏場の最も生長する時期に伐採すると、『広葉樹は地中から潤沢に水分を吸い上げて葉を思いっきり広げ光合成をして成長します。』木自身に変色が入り易いのです。特に白い樹種(シナ・ナラ・タモ)は夏場には伐採出来ないのです。
木曽ヒノキを代表する国内産の針葉樹は天然林・人工林を問わず伐採次期が広葉樹と違い年中可能です。理由は木自身に変色が入りにくい為です。
木曽ヒノキは100%国有林です。国の木と言う事は、予算処置が付いています。本年の予算は3月に衆議院を通過していますので4月1日から執行されるのですが、4月から年を越えた3月までに予算を執行される訳ですが、先月号で述べましたが、木曽谷から生産される木曽ヒノキは年間生産数量700M3しかありません。僅か700M3を12ヶ月で分けて生産されるので、5月の市は原木はいざ知らず製材品は、年間を通して一番少ない端境期になります。だから出品されている木曽ヒノキ(天然)の製材品は市全体の出品数量からすると凄く少なかったと思います。
昨年の7月から木曽谷に出かけていますので、ようやく一年が過ぎました。一年がもたらす経験は、木曽ヒノキ・天然ヒノキ・人工ヒノキ等の木材知識だけでは有りません。

美しい木曽川と小生

美しい木曽川と小生

勿論木曽管材市の競り売りの買い方だけでなく、ライバルの材木屋の買い方の癖、商品によって違う競争ライバルとの関係等山の様に有ります。
今回の仕入材は彫刻に向いた天然木曽ヒノキの角材・卓球のラケットにも使える天然木曽ヒノキの柾目板・店舗の建築に使える天然ヒノキですが、今月仕入たメイン商品は人工林から生産された巾240ミリの板目の板です。僅か2枚の仕入数量ですが、今後服部商店の充実した商品に育てて生きたいと思っています。
理由は天然の木曽ヒノキ・天然ヒノキは今後益々供給が減る事は解っています。そうかと言ってホームセンターが取り扱う人工ヒノキ商品は大量生産されて大量に買い付けされるので、我々零細業者に向いた商品では有りません。
服部商店の目指している商いの形は隙間商売ですが、隙間商売のはっきりした方針が見えなかったらそれは絵に描いた餅になります。商いに哲学が無いとそれは成功しても一時的な偶然の賜物になりますが、哲学が有れば、人工の森林からの恵みを、消費者の皆様に正しい品質・的確な納期・正しい価格表示で販売できれば、現在の日本の荒れた森林に少しは貢献出来るのではないかと思っています。

一斉に緑が芽吹いた木曽の山

一斉に緑が芽吹いた木曽の山

アメリカ広葉樹原木製材完了

昨年12月に買い付けた広葉樹原木(数本は針葉樹)コンテナ8本の製材が5月18日に全て終了しました。買い付け日から約5ヶ月、日本の港に最初のコンテナが入港したのが1月末でしたので4ヶ月以内に終了したのは服部商店の社員の頑張り、港でコンテナから原木を卸してくれた阪南港運様、港から服部商店まで横持ち作業を請け負って頂いたミツルトランスポート様、鋸の目立てをしてくれた中地鋸加工様、ワレ止め材を分けて頂いた石井清商店様等の関連業者のお陰で小生の当初の目標5月末から二週間早く完了しました。
製材の順番は白い痛みやすい樹種から始め最終は、材の痛みが進みにくいブラックウオールナットが最後というスケジュールで行いました。
最初に製材しましたバースウッド・ハードメープル・ソフトメープルは日本国内で板を製材するのに一番難しい樹種なので他の樹種に比べて倍の時間と倍の手間が掛かりました。
プロの材木屋でもこの3樹種の乾燥後の材を見ても、服部商店の取り入れた乾燥技術方法は解らないと思います。又こんな手間の掛かる事を何故するのと言う方が大勢で、私の考え『一見何処にでも有る広葉樹製材品ですが、実は服部商店しかない広葉樹製材品を扱う』を実現させる事が服部商店の御客様、従業員、関係業者様、全員が喜んでくれる今流の言い方WIN・WINの関係になり幸せがくると思っています。
次に製材したのはホワイトオーク材です。バージニア州産・ウイスコンシン産・オハイオ州産と製材しましたが材質の違いは、有る程度の知識は有りますが、そのノウハウはあくまで平均的なレベルで、本来は3つの産地に施すノウハウは違う筈ですがそれは実行出来ませんでした。ただし広葉樹原木の製材の基本初めてトライする樹種は出来るだけ冬場の一番寒い時期に製材し、ゆっくり乾燥させる事で解決しようと考え、ノウハウが少ないバージニア産を最初に製材しました。ウイスコンシン産とオハイオ産は過去に製材した経験とノウハウがあるのでバージニア産が済んだ後に製材しました。
ホワイトオーク材は日本国内では最も多く使われてきた壁用のツキイタがシート貼りにマーケットを取られて使用数量が激減している情報を聞いていますが、今シーズンは国内産の良質ナラ材・ロシア産のナラ材が超品薄状態なので、需給バランスから見ると何故かバランスが取れていて価格は高値横ばいです。

オハイオ産ホワイトオーク

オハイオ産のホワイトオークはウイスコンシン・バージニア産とは全く色合いが違いました。3つの産地のホワイトオーク材の乾燥が上がった秋口にはホワイトオーク材の展示即売会を催す計画を立てています。
是非3つの産地の材を比較して見て頂きたいと思います。(写真がオハイオ産です)

次にレッドオークを製材しました。全てノーザン地区の材です。レッドオークの産地で最も北に位置しますが決して赤すぎない白っぽいレッドオークです。昨シーズンは一部ペンシルバニアのレッドオークをサンプルに製材しました。この産地も色は真っ赤色では有りませんが、ノーザン地区の材と比べると赤いので、今シーズンは全てノーザン地区のレッドオークに限定して買い付けをしました。来シーズンもノーザン地区の材に限って買い付けします。
ところで今シーズンは新しいパナマ運河が貫通したおかげで昨年よりペンシルバニア産材ブラックチエリー材が昨シーズン比、1か月以上早く入荷しましたので、この材をレッドオーク材の次に製材しようと考えましたがウイソコンシン産のブラックチエリー材も同じ時期に入荷していましたので、ウイスコンシン産を製材してからペンシルバニア産を製材しました。
両方とも材その物の出来はまずまずですが、木質の違いは明らかです。板全てに産地表示『ウイスコンシン→WI(普通の色合い)・ペンシルバニア→PA(日本人が好みそうな色合い)』を施していますので、ホワイトオークの展示即売会に間に合えば2つの産地の材を見比べて購入してください。
最後にウイスコンシン産のウオールナット原木63本を製材しました。服部商店はウオールナットの最高の産地のオハイオ産の原木も仕入できますが、今シーズンは、あえて見送りました。理由は原木の中から出
て来る金属片がウイスコンシン産の方が少ないからです。ウオールナット原木はアメリカ産広葉樹原木のなかで多く流通している材『イエローポプラ・ホワイトオーク・レッドオーク・ハードメープル・ブラックチエリー・ウオールナット・主要6樹種』の中で一番供給が少ない樹種です。ウオールナット材は森林の立ち木の場合金属片を中に含む事は少ないですが、森林の木は比較的径が細いです。どうしても径の太い木を世界中のバイヤーは欲しがります。その木は人間の生活している付近に多く残っています。太い木は昔の生活の名残で金属片を含んでいる可能性が多いのです。
今回製材したウオールナット原木は森林の中の生産材として厳選してきたつもりですが、そうでない木が3本有りました。
製材が全て終わりましたが、これで終わりでは有りません。天然乾燥を施して人工乾燥を施してようやくご購入して頂ける商品に仕上がります。
*余談話『東海地区でウオールナット原木の径の太い原木ばかりを製材している知人に聞いたところ3割以上の確立で金属片を含んだ原木に出会います。』です。

業界新聞に取り上げて頂きました

少し古い記事ですが、服部商店の勉強会を関西の木材業界を主に取上げている東洋木材新聞に取上げていただきました。

業界新聞に取り上げていただきました

材木屋は世間で尊敬されている業界だと小生は考えています。理由は神様の贈り物の『木』を扱っているからです。と言う事は木材に関するあらゆる知識・情報を適格に掴んでいなければならない立場に有ることだと思います。
昔から伝わってきた技術等を後継者に伝えていく事が我々の責任ですが、しかし取扱い樹種等が外部環境の変化によって変わってくるのは当たり前です。今シーズンアメリカの4州を回りコンテナ8本合計本数271本の広葉樹を購入して来ましたが、単純に現在人気樹種のホワイトオーク・ブラックウオールナットを製材して販売すれば良いのかと考えました。
販売実績が無く、製材技術も無く、乾燥方法も知らないバーズアイメープルを買いつけたのは、折角アメリカまで買付けに行ける最大のメリットを活かすためには、アメリカで生産されて日本人のマーケットから求められる樹種は全て供給できるようにあらゆるノウハウを身に着ける事が最も大事な事だと考えたからです。
国内で販売できる量が少ない樹種でも、その樹種が必ず必要だと消費者の皆様から要望される樹種が有る限り小生のノウハウの一部を服部商店勉強会で来年以降も見て頂きたいと考えています。

先月号のアンケートの結果

Q、木材も食品に近い(生産者・お百姓さん)表示が望ましい。(ヒノキ・スギを製材している国産材の製材工場で県表示している製品が現実に有ります。)

『はい』とご回答頂いた方が90%以上でした。その中で極当たり前の事『表示を嫌がる理由が解らない』を書いていただいた方がいらっしゃいました。
又具体的産地の情報も知りたいとご回答を頂いた方もいらっしゃいました。よく考えると当たり前の事だと小生は考えますが、何故か木材業界は産地表示に積極的では有りません。
合法木材を表示する事は、当たり前の表示義務ですが、木材業界全体が産地表示を積極的にオープンにしない理由を小生の独断と偏見で申し上げます。『ここまで疲弊している木材業界です。それをしなかったらお先まっくらだと小生は考えています。』

  1. 一番良い産地の材を扱っている方は良いが、日本国内全部の業者が扱えない。その情報をオープンにすると商いが成立しなくなる。
  2. 産地の情報なんかに全く興味が無い。
  3. 競争ライバルに、仕入ソースのノウハウがばれる。
  4. 産地情報を知らない。
  5. 木を販売するより住器備品を販売している金額が多い為に無頓着です。

まだまだ多くの理由は有ると思いますが、決して小生が木材業界の内部告発をしているのでは有りません。
正直に有りのままの情報を公開する事で、真実が消費者の皆様と情報共有出来る事で、木その物の価値を認めて頂けるのだと考えているからです。
材木のあるゆる情報を公開する事は以前、ある材木屋の方から『材木屋の常識は他の産業の常識とは違う』と言うお話を聞いたことが以前有りました。しかしそんな事をいつまでも言っていたら自滅します。それだけは避けたいだけです。

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